LANDMARK 2 Lesson 10 Bhutan: A Happy Coutry

Lesson 10
Bhutan: A Happy Country ブータン:幸福な国

Part 1 本文和訳

あなたは人生で何を大切にしていますか。どんなことがあなたを幸せにすると思いますか。それはお金や名声や仕事での成功でしょうか,それとも親しい友人や家族でしょうか。だれもが独自の答えを持っているでしょうし,正しい答えも間違った答えもありません。2011 年3 月,日本は東日本大震災という未曾有の災害に襲われました。中には,震災後,多くの人がお金や名声より親しい友人や家族のほうが大切だと気づくようになったと言う人もいます。

私たちは災害に向き合うまで,何が本当に大切なのかわからないのかもしれません。2011 年 11 月,1 人の若い国王が美しい王妃を伴って日本を訪れました。彼の名はジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュクといい,ブータンというアジアの小国の国王です。国王夫妻は東北の被災地を訪れ,人々を,特に子どもたちを励ましました。彼らのさわやかな笑顔は,震災後ほとんど忘れられていた概念である幸福を多くの日本人に思い出させてくれました。

Part 2 本文和訳

ブータンは中国とインドの間に位置し,ヒマラヤ山脈に囲まれた小さな国です。首都ティンプーにさえ信号機は 1 台もなく,人込みや交通渋滞とはかけ離れた静かな国です。およそ70 万人がその国で生活していますが,そこは日本の九州ほどの大きさです。ブータンの住民のほとんどが仏教を信仰しており,多くの人が男性用は「ゴ」,女性用は「キラ」と呼ばれる伝統的な衣装を着ています。

長い間,ブータンは江戸時代にちょうど日本が行っていたように孤立政策をとっていました。1974 年,ブータンはこの政策を取りやめ,国際社会に参加し始めました。テレビとインターネットは 1999 年に導入されましたが,人々が携帯電話を使うことができたのは 2003年になってからでした。しかしながら,その国はいくつかの面でかなり先進的でもあります。

たとえば,ブータンは公用語の 1 つとして英語を採用しており,2004 年には世界で最初の禁煙国家にもなりました。ブータンの 1 人あたりの GNI(国民総所得)は 2010 年に 1,920 アメリカドルでしたが,それは日本の 50 分の 1 でした。それゆえブータンは確かに経済的に裕福な国ではありません。それにもかかわらず,2005 年に行われた国勢調査で,国民の 97 パーセントが自分は幸福であると回答しました。

Part 3 本文和訳

多くのブータン人に幸福だと感じさせているのは GNH(国民総幸福量)という考え方です。GNH の考えは 1976 年に始まりましたが,その年に現国王の先代にあたるジグメ・シンゲ国王が,GNH は GNI よりも大切だと国際会議で述べたのです。彼は,人々を幸福にするものは精神的な豊かさであり,物質的な富ではないと述べていたのです。

明治維新以降,日本は急いで経済大国になることを目指しましたが,ブータンは違う道をたどりました。国際社会に参加するために孤立政策を断念する以前,ブータンは先進国の経験とモデルを研究しました。その結果,その国は,経済の発展は必ずしも幸福につながらないという結論に達しました。それは貧困,環境破壊,文化喪失だけでなく南北問題にもつながることがあるのです。それゆえ,ブータンはやみくもに経済を発展させることを避けようと決めたのです。ブータンは精神的な豊かさを高めてくれる自然環境や伝統文化を保存しながら,社会をゆっくりと近代化するつもりでした。その憲法において,ブータンは国家が GNH を追求する努力をすると宣言しています。

Part 4 本文和訳

ブータン政府は GNH に基づく政策を実行していますが,それには以下のとおり4つの柱があります。

1. 持続可能な発展の促進:当国は農産業を近代化することを意図する。それにはブータン国民の 80 パーセントが従事している。
2. 自然環境の保護:憲法は国土の 60 パーセント以上において森林地域を保護するよう当国に求める。ブータンの電力供給は水力発電からもたらされ,それは自然環境に優しい。
3. 文化的価値の保存と促進:人々は公式行事で伝統衣装を着用するよう求められ,あらゆる建物は伝統建築を尊重する必要がある。学校において,子どもたちは伝統文化の価値を教えられる。
4. 優れた統治の確立:国王と政治家は国民の利益のために働く。ブータン国民は国王に直接話しかけることができる。当国では医療と教育は無料で提供される。

このような政策の下,ブータン人は自然や伝統文化を尊重して生きることを通じて幸福を見出しているのです。

Part 5 本文和訳

日本人の社会学者である大橋照枝博士はブータン人の幸福観を次のように説明しました。「仏教信仰が深く信奉され,家庭や職場での他者とのきずなが非常に強い。人々は困ったときに互いに助け合う。ブータン人はそういったふれ合いの中に幸福を見出すのです。」実際,ブータン人は家族と時間を過ごすことを重視しています。家族との時間は仕事の時間よりも尊重されているのです。ブータンの人々は,最も幸福な瞬間は家族といっしょにいるときに体験されると思っています。

ブータンが社会を近代化し始めて以来,都市への人口流入や失業といった問題が生じています。テレビやインターネットの影響を受けて,若者たちは外国のダンスや音楽に夢中になり始め,ジーンズやミニスカートを着用し始めました。しかしながら,ブータン社会の本質はそれほど変化していません。若者たちは今なお,親しい友人や家族とのきずなが人生で最も大切なつながりであると思っています。私たちはこの幸福な国がのちの世紀においてもその美点を保ち続け,他国に光明を与えることを望まずにはいられません。