ELEMENT 2 Lesson 5 The Da Vinci Codex

Lesson 5 The Da Vinci Codex ダ・ヴィンチの手稿

  ある晩,ビル・ゲイツは家に帰ると,妻にメモ帳を買うつもりだと言った。「いいんじゃない,あなた。」と彼女は新聞を読みながら言ったかもしれない。ただし,それはあなたが知っているような,普通のメモ帳ではなかった。それはたまたま,レオナルド・ダ・ヴィンチのメモ帳の1つ,レスター手稿だったのだ。ゲイツがオークションで,3,080万ドルでそれを買って以来,それはこれまで売られた中で最も高価な本となった。

  「codex(手稿)」とは,「木の塊」を意味するラテン語の単語である。それは,今日私たちが本として知っているものの最も初期の例で,数ページが片側でまとめられた形をしている。現代では,手書きの作品を,通例,手稿と呼んでいる。よく知られたものでは,聖書に基づいたものがある。それらはギリシャ語で,4,5世紀に書かれたものだ。

  それでは,レスター手稿(の話)に戻ろう。それは,文章と約 360 の図やスケッチから成っており,500 年以上前に書かれたものである。ダ・ヴィンチは,それを 1506年から 1510 年の間に書いたが,そのとき彼は 50 代後半であった。この手稿は,偉大な画家であり,科学者であり,思想家であった人の心に通じる窓を開いてくれる。

  手稿は,ダ・ヴィンチの特徴的な「鏡文字」で書かれている。この書式は,右から左に書かれており,鏡に映せば読むことができる。なぜ彼がこのような書きかたをしたかについては諸説ある。(まず)ダ・ヴィンチは左利きだったので,インクが手に付かないように,右から左に書いたのかもしれないと考えられる。別の説では,カトリック教会から注目されるのを避けるために,このような書きかたをしたとされている。というのも,彼の考えかたの中には,(教会にとって)相当に物議をかもすものがあったからだ。さらに別の説では,その書きかたは,自分のアイデアを守るための方法だったとしている。

  手稿に書かれた作品は,注目に値するすばらしいものだ。ダ・ヴィンチは水関係の技師として働いた経験があるため,多くのページを水の性質や制御について割いている。彼は,海や川を通る水の流れについて書いている。彼の挿し絵では,障害物の周りを流れる水の様子や,平らな面に落ちる水滴の様子が描かれている。また,彼が水の問題を解決するために設計した「水階段」のスケッチもある。こうした階段は,今日でも使われている。

  ダ・ヴィンチはこの手稿の中で,ほかにも多くのテーマを考察している。彼が扱った中には,星の研究,地球の丸い形,天気の性質,太陽・月・地球の関係が含まれている。月の相や,地球に光を当てている太陽,月の表面に反射する太陽光のスケッチもある。これらの現象を説明するために,彼は,聖書の中の宇宙についての説明や概念に異議を唱えている。

  レスター手稿を買って以来,ビル・ゲイツは毎年異なる国でそれを展示してきた。手稿は,2004 年にフランスを,2005 年には日本を訪れた。2006 年には,アメリカの航空博物館で,(手稿の中の)1ページが展示された。2007 年の6月から8月には,手稿はアイルランドで行われた2か月間の展示会の主要な展示物となった。

  ゲイツは,世界中の多くの人々が読めるように,手稿をデジタル化した。特別なソフトウェアによって,ダ・ヴィンチの鏡文字は,普通に読める文章にすることができる。またそのソフトウェアは,イタリア語から英語へと文章を翻訳してもくれる。自分の作品がハイテクによって利用されているのを見たら,ダ・ヴィンチも感動しただろうと考えずにはいられない。