ELEMENT 2 Further Reading 2 The Little Prince and the Fox

Further Reading 2
The Little Prince and the Fox
星の王子様とキツネ

キツネが現れたのはそのときだった。
「おはよう。」とキツネが言った。
「おはよう。」と王子は礼儀正しく答えた。もっとも,振り返っても何も見えなかったが。
「ここだよ。」とその声が言った。「リンゴの木の下。」
「君はだれ?」と王子はたずねた。「すごくかわいいね…。」
「ぼくはキツネだよ。」とキツネは言った。
「こっちに来てぼくと遊ぼうよ。」と王子は提案した。「ぼくはとても悲しい気持ちなんだ。」
「君とは遊べないよ。」とキツネは言った。「馴れていないからね。」

「えっ! ごめん。」と王子は言った。しかしよく考えてこう付け加えた。「『馴れている』ってどういうこと?」
「君はこの辺りの子じゃないね。」とキツネは言った。「何を探しているんだい?」
「ぼくは人間を探しているんだ。」と王子は答えた。「『馴れている』ってどういう意味?」
キツネは言った。「人間は,銃を持っていて狩りをするんだ。それがすごくやっかいなんだよ。それに,彼らはニワトリを育ててもいる。それが彼らの唯一おもしろいところだね。君はニワトリを探しているの?」
「ううん。」と王子は言った。「ぼくは友だちを探しているんだ。『馴れている』ってどういう意味なの?」

「あまりにも軽視されてきたことさ。つまり,『きずなを作る』っていうことだよ…。」
「『きずなを作る』?」
「そのとおり。」とキツネは言った。「ぼくにとって,君は 10 万といるほかの男の子とまったく同じ,ただの男の子だ。そしてぼくは君が必要ではない。そして君もぼくが必要ではない。君にとって,ぼくは 10 万といるほかのキツネと同じただのキツネだ。でも,君がぼくを馴らしてくれれば,ぼくたちはお互いが必要になる。ぼくにとって君は,世界でたった1人の男の子になるだろう。ぼくは君にとって,世界でたった1匹のキツネになる…。」

「わかってきたよ。」と王子は言った。「花がいたんだ…その花は,ぼくを馴らしたんだと思う…。」
「かもね。」とキツネは言った。「地球じゃ,何でもありだからね。」
「あっ,これは地球のことじゃないんだよ。」と王子は言った。

キツネはひどく興味を引かれたようだった。「別の星のこと?」
「うん。」
「その星には猟師はいる?」
「ううん。」
「へえ,それはおもしろいね。じゃあニワトリは?」
「いないよ。」
「完璧なものなんてないんだね。」とキツネはため息をついた。しかし,彼は自分の考えに話を戻した。「ぼくの生活は単調なんだ。ぼくがニワトリを狩る。人間がぼくを狩る。ニワトリはみんな同じようなものだし,人間はみんな似たようなものだ。だからぼくは少し退屈でね。でも,君がぼくを馴らしてくれたら,ぼくの生活は日の光で満たされるだろう。ほかのだれとも違う足音がわかるようになる。ほかの足音だったら,ぼくは地面の下に隠れるよ。君の足音だったら,ぼくは音楽に誘われるように,巣穴から出てくるのさ。それから,ご覧よ! あそこの小麦畑が見えるかい? ぼくはパンを食べない。(だから)ぼくにとっては,小麦はまったく役に立たないんだ。小麦畑を見ても,何も訴えてくるものはないしね。悲しいことだけど。でも,君は金色の髪をしている。
だから,ぼくを馴らしてくれたら,すばらしいと思うんだ! 小麦は金色だから,それを見るたびに,君のことを思い出す。そして,小麦畑を吹き抜ける風の音だって,好きになると思うよ。」

キツネは沈黙し,長いこと王子を見つめていた。「お願い…ぼくを馴らして!」と彼は言った。
「そうしたいけど。」と王子は答えた。「でも,あまり時間がないんだ。ぼくは友だちを見つけなきゃならないし,学ぶこともいっぱいあるからね。」
「君が馴らしたものからしか学ぶことなんかないよ。」とキツネは言った。「人間には学ぶ時間なんてないんだよ。彼らは店で出来合いのものを買う。でも,友だちが買える店なんてないから,人間にはもう友だちがいない。もし友だちが欲しいんなら,ぼくを馴らしてくれなくっちゃ!」

「何をしなくちゃいけないの?」と王子はたずねた。
「すごく辛抱強くなくちゃいけない。」とキツネは答えた。「まず,ぼくからちょっと離れたところ,あそこの,あの草むらに座るんだ。ぼくは横目で君を見るけど,君は何も言っちゃだめ。ことばは誤解のもとだからね。でも日ごとに,ちょっとずつ君はぼくの近くに座れるようになる…。」

次の日,王子はまたやって来た。
「同じ時間に戻って来るほうがよかったのに。」とキツネは言った。「たとえば,君が午後4時に来るなら,ぼくは3時までにはうきうきしだすだろう。4時に近づくほどに,ぼくはどんどんうれしくなってくる。4時までには,ぼくはすっかりわくわくしちゃって,そわそわするんだ。幸福になるために支払わなければならないものがわかるようになる。でも,君がいろんな時間に来たら,ぼくはいつ心の準備をしたらいいのかわからない。儀式が必要なんだよ。」

「『儀式』って何?」と王子はたずねた。
「軽視されてきた別のものだよ。」とキツネは言った。「ある日はほかの日とは違う,ある時間はほかの時間とは違うっていう事実さ。たとえば,猟師たちには儀式がある。彼らは木曜日に,村の女の子たちと踊るんだ。だから木曜日はすばらしい日なのさ。ぼくはブドウ園までずっと散歩することができる。もし猟師たちがいつでも好きなときに踊ったら,どの日もみんな同じになって,ぼくには全然休日がなくなっちゃうよ。」

そんな風にして,王子はキツネを馴らした。そして,別れの時が近づくと,「ああ!」とキツネは言った。「ぼく,泣いちゃうよ。」
「君のせいじゃないか。」と王子は言った。「ぼくは君に何にもひどいことはしたくなかったけど,君がぼくに馴らしてって言ったから…。」
「うん,もちろんだよ。」とキツネは言った。
「でも,君は泣くんだよね。」と王子は言った。
「うん,そうだよ。」とキツネは言った。

「じゃあ,君が得たものは何もないんじゃないの?」
「手に入れているよ。」とキツネは言った。「小麦の色のおかげでね。」 それから付け加えた。「またバラを見に行ってごらんよ。君のバラは世界中でたった1本しかないバラなんだって,君にもわかるだろう。それから,さよならを言いに戻ってきて。そうしたら,君に秘密の贈り物をあげる。」

王子はまたバラを見に行った。
「君たちは,ぼくのバラとは全然違う。君たちはまだ何者でもないんだ。」と王子はバラたちに言った。「だれも君たちを馴らそうとしなかったし,君たちもだれも馴らそうとしなかった。君たちは,以前のキツネと同じだよ。彼は,10 万といるほかのキツネと同じだったんだ。でも,ぼくは彼を友だちにしたから,今では彼は世界中でたった1匹しかいないキツネなんだ。」

バラたちは恥ずかしくなった。
「君たちはきれいだけど,空っぽだ。」と王子は続けた。「君たちのために死ねる人はいない。もちろん,たまたま通りかかった人なら,ぼくのバラは君たちそっくりだと思うだろう。でもぼくのバラは,たった1人で,君たちみんなよりも価値があるんだ。彼女はぼくが水をあげたバラなんだから。彼女はぼくがガラスをかぶせたバラなんだから。彼女はぼくがついたてで(風から)守ってあげたバラなんだから。彼女はぼくがイモムシをやっつけてあげたバラなんだから(イモムシは,チョウになれるように,2,3匹残しておいたけど)。彼女は,ぐちを言ったり自慢したり,そして時々何も言わなくなったときだって,耳を傾けてあげたバラなんだから。彼女は,『ぼくの』バラなんだから。」

そして,王子はキツネのもとに戻ってきた。
「さようなら。」と王子は言った。
「さようなら。」とキツネは言った。「秘密を教えるよ。とっても単純なことだよ。心を使ったときだけ,はっきり見えるのさ。大切なことは,目に見えないんだ。」
「大切なことは,目に見えない。」と王子は忘れないように繰り返した。

「君のバラを大切なものにしたのは,君がバラのために費やした時間だよ。」
「ぼくがバラのために費やした時間…。」と王子は忘れないように繰り返した。
「人間はこの真実を忘れてしまった。」とキツネは言った。「でも君は,忘れちゃだめだよ。君が馴らしたものに対しては,永遠に責任があるんだ。君は君のバラに対して責任があるんだ…。」
「ぼくはぼくのバラに対して責任がある…。」と王子は忘れないように繰り返した。