CROWN 2 Reading 1 Sun-Powered Car

Reading 1
Sun-Powered Car サンパワード・カー

(pp.80-84)

 その日も、下り坂のテレビニュース記者の生活の、ありふれた不愉快な一日にすぎなかった。

 マルコムは都会に戻る途中だった。彼はおなかが空いていた。次に目にしたレストランに立ち寄ろう、たとえどんな見栄えの店でも、と彼は心に決めていた。

 「ヘレンのハンバーガー 町いちばんのハンバーガー」と看板には読み取れた。マルコムは、ヘレンの店はこの小さな町で唯一のハンバーガーショップじゃないのかと勘ぐった。

 彼は車を停め、車外に出た。まさに店に入ろうとした瞬間に、通り沿いになにかがやってくる音が聞こえた。それは自転車にしては大きすぎ、自動車にしては静かすぎる音だった。彼は振り返った。

 それは、彼の車の後ろに停まろうとしている1957年型シェビーだった。50年前の車にしてはいい状態だった。けれど、上に奇妙な見栄えの荷物ラックが載っていた。

 なぜエンジンがそんなに静かなんだ。そのとき彼は悟った。車の上の平らなものは荷物ラックではない。ソーラーパネルだ。

 オーバーオールのズボンをはいた中年男とTシャツを着た二人の屈強な若者が車を降りてきた。

 レストランでは、女性がその男たちのテーブルに歩み寄った。「いらっしゃい、ネッド。みなさんご機嫌いかが」

 「みんな元気だよ、ヘレン」
 「では、今日はなににしますか」
 若者のひとりがまさに口を開こうと思われたそのとき、ネッドは言った。「いつものをくれればいいよ」
 「了解よ」 彼女はキッチンに向かって叫んだ。「ハンバーガー、オニオンリング添え3つ、バニラシェイク1つ、チョコレートシェイク2つ」

 扉のベルを鳴り響かせ、ひとりの男がレストランに入ってきた。「車にどんな細工をしたんだよ、ネッド」
 ネッドは微笑んだ。「ついにやったよ、ジェイク。俺の最高の発明品だ」 男たちはネッドの車について二言、三言さらにことばを重ねた。

 ヘレンはマルコムの注文を取りに来た。

 「今日はなにになさいますか」
 「うーん、今日はなにがおすすすめですか」
 「この近辺のかたじゃないですよね」
 「ええ、違います」
 「でも、どういうわけか、なんだか知っているかたのようにお見受けします」

 マルコムは笑顔を抑えた。「チャンネル12ニュースをご覽になることはありますか」

 「はい、ときどき。私のひいきではありませんが…」
 「私はチャンネル12の記者です。勤めて25年以上になります」
 「ニュースキャスターをなさっているのですか」
 「いいえ、ニュースキャスターではありません。そうあるべきだったんですが、そんなに首尾良くは全くいきませんでした。ともかく、ハンバーガーとポテトフライとコーヒーをください」

 「すぐお持ちします」 ヘレンはきびすを返して去ろうとした。
 「おっと、もう一点。もしよろしかったら、あそこの男性、ネッドについてお伺いしたいのですが」
 「ええ。どんなことですか」

 「自分の車がサンパワー(太陽光エンジン)だっておっしゃっているのを耳にしまして」
 「ええ、すごくないですか。やっと完成させたんです」
 「ご自分でなさったんですか」
 「ええ、彼、発明が大好きなんです」
 「それで生計を立てているんですか」
 「いいえ、農業をやっています。かつては飛行機会社勤務でしたが。その後、お父様の農場を引き継いだんです」

 マルコムの口につばがたまりはじめた。けれどもハンバーガーやフライドポテトに対してじゃない。なんて話だと彼は思った。ここにいるのは、若いハイテクの天才たちが寄ってたかってもかなわない頭の切れる農民だ。最初の実用サンパワー(太陽光)自動車を作り上げたんだ。しかも、57年型シェビーの車体で。

 マルコムはネッドのテーブルへ歩いていった。

 「お邪魔して申し訳ありませんが、お車がサンパワー(太陽光エンジン)とおっしゃっているのが聞こえたものですから」

 「そのとおりです」 ネッドは言った。

 二人の若者は食べ物を口一杯にほおばりながら、首を縦に振ってうなずいた。

 「ということは、なにかバッテリーを使っているわけですね」
 「もちろん。暗い中では運転ができませんから。牛をひいてしまうかもしれないし」
 「ヘッドライトがつくようにするためだけにバッテリーがある、ということですか」
 「それからテールライトも。バッテリーはひとつ。それだけですよ」
 「ご冗談でしょう」 マルコムは言った。
 「いや、6ボルトバッテリー一台だけだ」
 「いやあ、それはびっくりだ。拝見しても構いませんか」
 「問題ない。来てください」 ネッドは立ち上がり、外に出て、自分の発明品へとマルコムを導いた。
 「よく見てください」 ボンネットを開けながら彼は言った。

 マルコムは開いた口をふさぐことができなかった。6ボルトバッテリー以外、ボンネットの下にはなにもなかった。

 ネッドはボンネットを閉じ、車の横手に回り込んだ。「後ろのここが心臓部なんだ」 彼は後部座席ドアを開けた。

 マルコムは混乱した。「これはなんですか」
 「これが動力源の場所ですよ」

 マルコムはもっと近づいて見た。自転車のギア、チェーン、ペダルの場所をあけるため、床が切り取られていた。
 「この車はソーラーパワーだとあなたはおっしゃったと思うんですが」
 「ソーラーパワー? いいや。私はサン(息子)パワーだと言ったんだ。そういうふうに私はこいつを呼んでいるんだ。私のサン(息子)パワー車さ」

 二人の若者がヘレンの店から出てきて、ペダルにブーツを載せながら後部座席の定位置についた。

 「ええ、ならばこれはなんですか」 マルコムは車の上のソーラーパネルを指さした。
 「ソーラーパネルだよ」
 「それならどうしてそれを使わないのですか」
 「試したよ。でも、ヘッドライトをつけるくらいの力しか出せないのさ」 ネッドは運転席に乗り込み、ドアを閉めた。「さあ、行こうか、息子たちよ」

 息子二人はペダルをこぎ始め、ネッドは通りへと車のハンドルを切った。

 マルコムはかぶりを振り立ちつくした。これはラッキーなことになるぞと思う前に、もっと分別を持つべきだったのだ。彼はヘレンの店に戻り、食事を始めた。

 そのとき彼は思い立った。ネッドの車は、当初彼が思ったような革新技術のストーリーではない。けれども、奇妙かつ素晴らしい人間物語である。

 結局、その日は、そんなにひどい一日にならずにすみそうだった。