CROWN 2 Lesson 3 Paul the Prophet

Lesson 3
Paul the Prophet

(pp.34-41)

予言者パウル

2010年、6月。FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップがその最終局面を迎えつつあるとき、スポーツ担当の記者たちは勝者を予測しようとしていた。だれもパウルに勝る予測の記録を残せるものはいなかった。彼は常に正しかったのだ。

Section 1 本文和訳

ドイツ人はサッカーが好きだということはよく知られている。ドイツ代表チームが決勝トーナメントに近づくにつれて、緊張が増した。6月13日、パウルはドイツがオーストラリアに勝つと予測した。パウルは正しかった。6月18日、パウルはドイツではなくセルビアを選んだ。彼は正しかったのだが、予選リーグであり、ドイツは大会に残った。6月23日、パウルはガーナではなくドイツを選んだ─また正しかった。ドイツが戦った全ての試合で、パウルは正確に勝者を選んだのだった。

6月27日にドイツはイングランドと試合をした。パウルはドイツを選び、彼は正しかった。7月3日、ドイツは準々決勝でアルゼンチンと対戦した。再びパウルはドイツチームを選び、そして再びパウルは正しかった。

ドイツは準決勝に進出し、パウルは誤った予測をひとつもしていなかった。世界中がドイツ対スペインの準決勝戦のパウルの予測を待っていた。

Section 2 本文和訳

ドイツ中の人はパウルが大好きになった。しかし、ドイツのファンはすぐにショックを受けることとなる。スペインとの準決勝戦について、パウルはスペインを選んだのだ。

ファンは激怒した。パウルは殺害するとの脅迫を受け取った。パウルを刺身のように切り刻んでディナーに食べてしまいたいという人さえもいた。

もちろん、スペインは喜んだ。スペインの首相のホセ・サパテロは殺害の脅迫のことを聞くと、パウルにスペインに避難するように提案した。

ドイツ対スペインの試合は7月7日におこなわれた。パウルはまた正しかった。スペインが勝ったのだ。パウルは6回中で6回正しかった。ドイツのファンは自分たちのチームが敗れて悲しく思ったが、パウルの洞察力に対してさらに大きな敬意を抱いたのだった。

3位決定戦においてウルグアイではなくドイツを選んだとき、パウルはまた正しかった。そして2010年FIFAワールドカップの決勝戦でスペインがオランダを破るという最後の予測についても、パウルは正しかった。

パウルは連続8試合について完璧で100%正確な予測の記録を残した。このパウルとはだれなのだろう。そしてどのようにしてパウルは、このような正確な予測をすることができたのだろう。

Section 3 本文和訳

有名になったので、たぶんすでにパウルがだれなのかおわかりだろう。世界で最も有名なタコだ。そう、パウルはマダコで、2008年にイングランドで生まれドイツのシーライフセンターに移され、そこで子どもたちの大変な人気者になった。

タコは何種かの脊椎動物と同じくらい知能がある。パウルはとりわけ知能が高かった。パウルはガラスの瓶を開けられるようになって、水族館の職員を驚かせた。しかしながら知能は、パウルが勝者をうまく選べたこととは関係がない。

予測の過程は単に偶然によるものだ。パウルはお気に入りの食べ物のイガイが入っている2つの箱を与えられた。それぞれの箱にはチームの国旗がついていた。パウルが先にイガイを食べた方の箱が試合の勝者の予測とされた。

8回連続で正しい予測をする確率はどれくらいだろう。データ分析を専門とするホセ・メリダは、コイン投げのモデルを用いてその確率を説明する。178人のうちのひとりが、連続8試合の勝者すべてを予測できる可能性がおおいにあるとのことだ。何百万ものファンがワールドカップの試合を予測したので、8回正確な予測をした人が何千人もいたのかもしれない。

パウルはすばらしかったのだが、しかしほかに類を見ないというわけでもなかったのだ。

Section 4 本文和訳

人々が未来を予測するために動物を観察するというのは奇妙に思えるかもしれないが、少しも珍しいわけではない。

古代中国においては、亀の甲を観察した。デルファイのギリシャの神殿には占うためのネズミがいた。古代ローマ人は、鳥の飛び方で未来がわかると信じていた。最近では、レディ・ワンダーという名のアメリカの馬が、未来についての人々の質問に答えた。科学者たちは、地震を予知できるかどうか確かめるために鳥や魚の行動の変化を研究した。パウルは、人々が未来を予測することを求めた最初の動物ではない。

ワールドカップが終了したとき、パウルは彼の予測に対してご褒美が与えられた。小さなワールドカップと好物の食べ物─イガイだ。そして、水族館はパウルがスポーツの予測から引退することを発表した。「パウルは本職にもどることになります─子どもたちを笑わせることです」

タコはふつう大体2年間ほどしか生きない。パウルは、(タコとしては)十分に長い生涯を過ごし、そして、2010年10月26日に水族館で安らかに亡くなった。パウルの墓の印にするために、小さな聖堂が作られた。

サッカーファンは、パウルのことを長く記憶にとどめることだろう。