CROWN 2 Lesson 2 Into Unknown Territory

Lesson 2
Into Unknown Territory

(pp.18-25)

未知の領域へ

 羽生善治は歴史上最も偉大な棋士のひとりだ。彼はまさしく「将棋の王」だ。このレッスンで彼は、プロの棋士としての経験についてインタビュアーと話す。

Section 1 本文和訳

あなたが初めて将棋をすることを覚えたのはいつですか。

 小学校1年生のときです。最初はほとんどすべての対戦に負けましたが、1か月ぐらいすると、勝ち始めました。小学校2年生のときに、私は八王子の将棋道場へ行き、そこの子どものトーナメントに参加しました。決勝へ出場することはできませんでしたが、その対戦を楽しみました。もっと上手な棋士になりたかったので、練習のために道場へ通い始めました。

将棋のどこが好きですか。

 子どものころ、たくさんのさまざまな駒を使って将棋を指すのが興味深いと思いました。しかも、ひとつひとつの駒が違う動きをするのです。さらに、対戦の結果はとてもはっきりしています。つまり、勝つか負けるかのいずれかなのです。対戦全体が原因と結果の過程です。そして勝ち負けは自分自身の責任です。もちろん、負けることはいい気分ではありませんが、将棋が好きです。なぜなら将棋はとても奥が深いからです。

Section 2 本文和訳

プロとしての経歴の中であなたは対戦の70%以上勝っています。駒を進めるときいつも自信がありますか。

 ときどき、駒をどう進めたらいいか決められないときがあります。深く考え込む時間がないときには、手を駒に置くまで次の駒をどう進めたらよいかわからないことさえあります。これが運が作用し始めるときなのです。自分の手がよい決断をすると信じるのです。ですから、あなたの質問に答えると、駒を進めるとき、いつも自信があるとは限りません。

プロの棋士は数百手先を考えられると聞きました。正しいですか。

 ええっと、それはあまり確信がありません。棋士たちのグループが、十手先(のゲームの展開が)どのようになっているかを予測できるかどうか議論していたときがありました。彼らはみんな予測できないということで一致しました。将棋をするときは、駒を進めるたびに決断する必要があります。先程言ったように、必ずしもいつも完全な自信があるというわけではありません。それどころか、これが「おそらく」正しい手だろうと考えているのです。相手は今度はあなたが予想だにしなかった駒の動かし方をしてくるかもしれません。そしてこの過程が対戦が終わるまで続くのです。最も大切なことは意思を決定する能力です。

Section 3  本文和訳

意思決定をするときに、自分の直感に頼ることはありますか。

 はい、私は直感というものを信じています。私の経験から、直感に基づいた手の約70%は正しいということがわかりました。多くの手を予想できることは大切ですが、もっと大事なのは注意を(多くでなく)2、3の良い手に集中させることです。そこで直感が必要になります。でも、直感は多くの経験を経てのみ得られることを忘れないでください。

あなたは多くの時間を過去の戦略を研究することに費やしますか。

 さまざまな戦略を学ぶことは大切ですが、戦略を知ることと、対戦に勝つことができるということはまったく別問題です。必要なのは、その戦略の意味を真に理解することによって、知識を見識に変えることなのです。

あなたはときどき、意外な手で相手を驚かせることがあります。それは対戦に勝つのに効果がありますか。

 必ずしもそうではありません。なにか新しいことを試みるなら、50%以上の確率で失敗するでしょう。もし安全策をとるならば、しばらくの間は高い勝率を維持できるかもしれませんが、10年先も勝ち続けていることはできないでしょう。そしてそのうちに結局は、創造性を失うことになります。独創的なことを試みるほうがもっと楽しいです。

Section 4  本文和訳

あなたは素晴らしい才能をお持ちだと、私たちみんなは知っています。自分の才能をどのように定義しますか。

 そうですね、もし才能があるとすれば、それは我慢強さです。駒の進め方を予期できること、あるいは、ひらめきを持つことは大切ですが、将棋を上達させるために努力することが、いかなるときでも持ちうる最大の才能なのです。

あなたは将棋に恋しているように見えます。将棋の対戦の中でいちばん魅力的なところはなんですか。

 将棋の歴史において、何十万回と対戦がおこなわれてきましたが、私たちは将棋の世界のほんの一部分しか知りません。将棋をするたびに私は見知らぬ領域へ旅立っているような気がします。だから、それが将棋の魅力的なところなのです。

もしあなたがプロの棋士でないなら、なにをしているだろうと考えたことはありますか。

 私はいままで、本当にそんなことは思ったこともありません。もし、ほかの仕事に就くよう強いられるならば、たぶん一日だけタクシーを運転してみたいかもしれません。それは興味深い仕事だと思います。なぜなら毎日どこへ行くかわからないからです。

座右の銘はありますか。

 「幸運は大胆な人に微笑む」です。